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2020/09/21 16:00

「百年の技の集大成」


THE MEISTER/ザ・マイスターに参加する老舗の中でも一番長い歴史を誇るのが、"箔押し"のマイスターである有限会社シミズです。


前身である「清水印刷所」は1910年浅草の地で生まれました。創業当時には、皇室向けの革製品への刻印も拝命し、今では皆様もご存知の欧州ハイブランド革製品へのロゴ刻印なども行っています。皆様が目にしたブランドの刻印は、"箔押し"のマイスターであるシミズの手によるものかもしれません。そう考えると、なんだかマイスターが身近に感じませんか?

今から110年も前に誕生したシミズは初代からその技と理念が受け継がれ、現在は四代目が跡を継いでいます。


三代目の社長であった故・清水康夫氏は、百年の技の集大成、美しい芸術作品ともいえる刻印を生み出しました。それが「左馬」です。

左馬の押し型の基礎となる型は手彫りによるもので、馬の躍動する筋肉、滑らかな蹄、つややかな尾など、機械彫りでは不可能な細やかさが表現されています。革にはしっかりと押し加工しなければ躍動感あふれる質感は表現できず、左馬はぼやけてしまいます。また型が硬すぎ押しが強すぎると今度は革が切れてしまいます。しっかりと押せて切れない左馬の型。百年の知恵と技術の賜物。経験から導かれる技と、ひと手間を惜しまない姿勢こそが、いつまでも輝き続ける左馬の質感を支えているのです。





「穏やかな紳士」


三代目の故・清水康夫氏は、まさに"マイスター"という称号が似合う紳士的な人でした。


アメリカ生活の長かった清水氏。

夏の暑い日には冷たいエスプレッソを、冬の寒い日にはほっと心が安らぐコーヒーを淹れてくれました。時には頑固に、時には優しく、若手を育てる、笑顔が穏やかな三代目。


そんな清水氏は、実は10年以上前にTHE MEISTERの基盤となる構想に走り出していました。つながりのある職人を自社のホームページで紹介し、これまでは裏方だった職人たちに光を当てようとしたのです。まだSNSがここまで普及していなかった時のこと。一つのホームページを作って情報発信するのは、専門家以外には難しい時代でした。

たくさんの職人が初めて顔を出し、表舞台に出ることとなりました。恥ずかしそうにうつむく職人、顔は恥ずかしいから作業風景にしてくれという職人、後ろ姿だけの職人、そして笑顔を向ける職人。


しかし、構想が実現化することなく、2016年、多くのマイスター仲間に惜しまれる中、清水氏は60代の若さで急逝されました。

早すぎる旅立ちは私たちにとって悲しいものでしたが、それでも清水氏が百年の歴史をかけて創り出した作品は残り続けます。世の中に、そしてその作品を手にした人々の思い出と共に生き続けます。


THE MEISTER/ザ・マイスターは、清水康夫氏の意志を引き継いだプロジェクトでもあります。
ようやく多くの人々に、この「左馬」と「理念」を伝えられる日を迎えました。


「清水も喜んでいると思います」
と話してくれた四代目。天国にいる三代目は、見ていてくれるでしょうか? 
THE MEISTER/ザ・マイスターを通して、たくさんの人に作り手の想いや姿が伝わりますように。












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